― 盲ろう者と支援者の皆さんへ (日本国内版)
同地域コーディネーター 福田 暁子
社会福祉法人 全国盲ろう者協会
心配する必要はありません。
パニックになる必要はありません。
新型コロナウイルスに感染すると、COVID-19と呼ばれる症状がでます。最初は風邪に似ていますが、ひどくなると肺炎になります。
効果的な治療法はまだありません。でも、あなたの行動によって予防できます。
このウイルスは人から人へと感染します。特に、人混みの中で、咳をしたり、触ったり、近くに寄ったりして感染します。
世界中にこのウイルスが広がっている状態、それがパンデミックです。たくさんのイベントが中止になりました。多くのお店やレストランが閉まっています。
私たち盲ろう者は特殊な状況に置かれています。
触らない、でも触らないと、他の人が近い距離にいないと、生きていけません。
● 盲ろう者のみなさんへ10のお願い ●
1. 家にいてください。
これが一番大事なことです。
2. 清潔にしましょう。
普段より回数多く、石けんを使って流水で手を洗ってください。20秒を目安に。
帰宅した時、喉に違和感がある時は、しっかりうがいしましょう。15秒2回を目安に。
眼鏡や、補聴器やコミュニケーション機器、そして白杖の表面も清潔に。
3. 健康でいましょう。
よく食べて、よく寝て、少しは運動しましょう。
普段よりもこまめに水分(水やお茶)を取るようにしましょう。喉についた新型コロナウイルスが肺に入るのを防ぐ効果があります。
健康的な生活習慣は、新型コロナウイルスに感染しても、症状が軽く済みます。
4. 換気をしましょう。
時々、窓を開けましょう。部屋の空気を入れ換えましょう。
5. お客さんは呼んではいけません。
パーティー(集会)はやめましょう。
6. 常に情報を得るようにしましょう。
可能ならICTを賢く使いましょう。
7. 直接会う人の数を減らしましょう。
政府や地域のお知らせを伝えるために、通訳者が自宅を訪問するかもしれません。短時間のおしゃべりはOKです。
可能ならば、通訳者は同じ人、一人に固定します。沢山の人が家にくるのはいけません。
8. カードを準備しましょう。
「盲ろう者(視覚と聴覚に障害があります)です。通訳と移動支援が必要です」と書いたカードを準備します。名前とコミュニケーション方法も書いてください。もしも、知らない所に移動しなければならないとき、このカードは役に立ちます。初めて会う人はあなたが盲ろう者だということに気づかないかもしれません。
9. テレワークにしましょう。
可能ならば、家にいるままで仕事をしましょう。
10. 誰かとつながっていましょう。
状況が許せば、誰かと一緒にいましょう。
◆ 盲ろう者をサポートする人に6つのお願い ◆
1. 盲ろう者の権利を守るようお願いします。
誰もが知るべき地域の情報は、盲ろう者にも必ず届くようにしてください。盲ろう者にとって、支援する人がライフラインです。盲ろう者のコミュニケーションのスタイルを尊重してください。
2. 支援をお願いします。
盲ろう者が孤立して、日常生活に必要な物や医療を得ることができない状態の時は、あなたの可能な範囲で支援をお願いします。一緒に外出しないほうがよい状況です。
3. 行動記録をつけてください。
いつ、どこに行って、誰と会ったか記録をつけてください。あなたが関わっている盲ろう者がその情報を必要とするかもしれません。
4. 通訳・介助員を証明できるものを携帯しましょう。
行き先によっては、社会的距離(ソーシャルディスタンス)を守るため、盲ろう者と離れるように指示されたり、家族同士でないと入店できない、と言われる場合があります。
その際は、通訳・介助業務をしていること、盲ろう者の家族ではないが、そばに居る必要があることを、説明する必要があるかもしれませんので、通訳・介助員であることを証明するものがあれば、携帯してください。
5. 健康で清潔でいましょう。
体調が悪い場合は、盲ろう者へ接触することはやめましょう。
6. 予防をお願いします。
あなたか盲ろう者のどちらかはマスクをしなければなりません。もしも、盲ろう者がコミュニケーションのためにあなたの口元を見ないといけないときは、盲ろう者にマスクをするようにお願いしてください。会話する前には手を洗いましょう。
(補足)
通訳・介助員、同行援護従事者、派遣コーディネーター、盲ろう関係団体のみなさまへ
(1)政府の基本的対処方針では、「障害者など特に支援が必要な方々の居住や支援に関するすべての関係者の事業継続を要請する」とされています。
よって、盲ろう者への通訳・介助員の派遣は可能です。しかしながら、三密(密閉・密集・密接)を避けるため、盲ろう者が複数集まるイベントなどは、原則として中止をお願いいたします。
(2)不要不急の通訳・介助員派遣は中止せざるをえない状況です。ただし、通院やスーパーなどに生活必需品を買いに行くことに対しては、派遣に制限はありません。その場合も必ずマスクをし、人や物との接触をできるだけ少なくする工夫をお願いいたします。
(例)
・派遣時間を短くする。
・混んでいない時間を選ぶ。
・あらかじめ購入するものを確認してから店内に入る。
(3)通訳・介助員は、通訳・介助の前後だけではなく、通訳・介助中もこまめに手指消毒を徹底してください。
盲ろう者を訪問する際も、外から持ち込むカバンや上着に新型コロナウイルスが付着している可能性があります。二重にして入り口で取り外すなどの工夫をお願いいたします。
(4)可能であれば、ICTを利用した遠隔通訳(文字通訳、ビデオチャットなど)を一時的に導入するなど、直接触れない柔軟な対応をお願いいたします。
(5)心の健康や衰えは、身体の健康や衰えに直結します。短時間であっても、近所を散歩することや、誰かと会話をする事は、健康でいるためには非常に大切です。柔軟な対応と工夫をお願いいたします。
以上